博報堂DYグループ、スター社員の思考方法をAI化し社内で活用→大幅な業務時間削減とクリエイティビティ創出の画像1
「STRATEGY BLOOM CONCEPT」のアウトプットイメージ

●この記事のポイント
・博報堂DYグループが、スター社員の思考方法をAIサービスに落とし込み、それを社員が利用することで大幅な業務効率向上を実現
・多くの社員がコンセプト開発に利用することで業務時間削減、その時間でさらに高度な業務への取り組みが可能に
・マーケターやクリエイターとの打ち合わせ前に、営業がたたき台として自力でコンセプトワークを行えるといった効果も

大手広告会社の博報堂DYグループが、スター社員の思考方法をAIサービスに落とし込み、それを社員が利用することで大幅な業務効率向上を実現させている。TBWA HAKUHODOのChief Creative Officer(CCO)であり、国内外で多数の受賞歴を持つ細田高広氏の思考方法を再現するAIサービス「STRATEGY BLOOM CONCEPT(ストラテジー ブルーム コンセプト)」を開発。プロダクト利用によって業務時間の削減、その時間でアイデアの深堀りや本質的な議論の増加といった効果や、クリエイターが細田氏に直接相談せずとも普段では思いつかないような視点で思考整理できるといった効果が出ているようだ。なぜ、このようなAIを開発したのか。また、社内ではどのように使われているのか。博報堂DYグループの担当に取材した。 

細田CCOの優れた手法を社内で有効活用してノウハウを継承

同プロダクトを開発・導入するに至った背景について、開発担当の博報堂テクノロジーズ豆谷浩輝氏はいう。

「背景としては大きく2つありまして、まずコンセプト開発には時間がかかるという課題があった点です。企画の最初のコアを考えていくというステップは、従来は営業、マーケティング、クリエイティブなどの部署の担当者が7、8回ぐらい集まり会議を重ねて、1カ月ぐらいかけてコンセプトを固めるというかたちでした。このように時間がかかっていた部分をもう少し効率化できないか、例えばAIを取り入れて5合目ぐらいまでにはもう少し早くたどり着くようにできないか、という発想から始めました。

もう一つの背景は、コンセプト開発の担い手育成という課題があったことです。コンセプト開発は専門性の高い業務なのですが、その手法が各チームごとにギルド的に蓄積されて、スキルとして社内で共有知として活かされていませんでした。そこで、細田CCOの優れた手法をもっと社内で有効活用してノウハウを継承できないかという視点に立ち、AIサービスを開発して多くの社員がいつでも利用できるようにしたいという思いで開発を始めました」

同社は2023年12月頃に開発に着手し、約1年かけて開発を行い24年11月に社内リリースした。具体的にどのようなAIなのか。

「クライアントが抱える課題、例えば『商品の売上向上』のために、新たなターゲット設定や戦略策定についての問いをAIが入力として受けて、それに対して細田CCOのインサイト型のコンセプト開発手法に従って、その課題を解決するコンセプトを提案するといったことをしてくれます。社員は『具体的にターゲットはここがいいよね』『そのターゲットはどういった課題やインサイトを持っているのか』という問いについてAIと壁打ちしながらコンセプトを詰めていったり、『競合はこういったことができるけど、こういったことはできないよね』といった競合視点でも分析して、『クライアントが持っている強みをどういうかたちで活かせるか』『勝ち筋を見つけていって、こういうコンセプトでやってみませんか』というコンセプトの開発を進められるというものです」(豆谷氏)

営業部門の社員による利用も多い

クリエイティブ部門の社員のみならず、営業部門でも高い頻度で使用されているという。

「幅広い職種の社員が使っており、さまざまな使い方があるのですが、営業部門の社員による利用も多いです。マーケターやクリエイターとの打ち合わせ前に、営業担当者がいったんこのAIを使って自分でコンセプトワークを行い、それをアイディアに関するディスカッションの叩き台にするといった使い方が多いです。利用者の割合としては営業担当者が40%ぐらいで、残りの半々がマーケターとクリエイターというイメージです。 

クリエイティブ部門とマーケティング部門の社員はもう少しアドバンスな使い方をしていまして、これまで自分たちが行っていたコンセプト開発に、細田CCOの思考方法に照らし合わるというプロセスを追加して思考整理をより深めることによって、これまで気づけてなかった視点を得るという使い方をしています」(豆谷氏)

AIの導入により、目に見える業務効率向上の高い効果が出ているという。

「職種によって効果に違いがありますが、当初の見立てでは1回の利用あたり4時間ほど時間削減効果が出ると見込んでいて、約4000時間の業務時間の削減効果がありました」(豆谷氏)

難易度の高い仕事により多くの時間を費やす

人手不足が叫ばれる昨今、同社としては業務時間の削減を将来的には人件費の抑制につなげたいという意向があるのか。

「AIを使う大きな目的は、業務時間を削減することも実現しながら、それによって社員の仕事の密度が高まり、難易度の高い仕事により多くの時間を費やしていき、人間しかできない創造的な仕事によってクリエイティビティを世の中に提供していくという点にあります。今後は発想支援など人間の創造性を支援するAIを開発し現場に投入していこうという発想です」(豆谷氏)

同社は今後もAI活用をさらに進めていく計画だという。

「コンセプト開発が主な用途である『STRATEGY BLOOM CONCEPT』の利用状況やメリット・デメリットを検証した上で、さまざまな分野のスター社員のスキルをAIサービス化していくことを検討しています。まず、今年度中にもマーケティングスキルに関するAIサービスを2つぐらい開発したいと考えております」(豆谷氏)


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