
かつては親会社の一事業に過ぎなかった、小さなWebマーケティング会社。
しかし、時代はガラケーからスマートフォンへ、静的な広告から動画マーケティングへと、劇的に変化していきました。
その波を敏感に捉え、「動画を起点としたマーケティングDX」を武器に、ファインズは急成長を遂げ、2022年にはついに上場を果たします。
けれど、そこがゴールではありませんでした。 代表取締役社長・三輪幸将氏は「成長のなかで多くの課題に直面した」と語ります。
マーケティングを、もっと多くの企業の武器にしたい。現場に根ざしたDXを、もっと“機能するもの”にしたい。その想いの先にあったのは、「経営改革」という大きな決断でした。
なぜいま、ファインズは変わるのか──。
“動画屋”の殻を破り、企業の成長を支援するマーケティングソリューション企業へと進化を遂げようとしているファインズの現在と未来を、三輪氏に聞きました。
時流に乗り成長した、動画マーケティング事業
——ファインズ創業の経緯を教えてください。
株式会社ファインズは、もともとフリーセル(現ブランディングテクノロジー)という会社の中の、Webコンサルティング部門を子会社化して誕生しました。2010年の子会社化当時は、ちょうど世の中がガラケーからスマートフォンへの移行期。多くの企業がモバイル専門の事業や子会社を立ち上げる中、ファインズも同様の意図で誕生しました。当初はモバイル向けのFlashサイト作成、SEOやMEO(マップエンジン最適化)などWeb施策を中心に展開していました。
動画マーケティング事業は、私が海外のWebサイトで動画が埋め込まれたページを多く目にしたことがきっかけで、スタートしました。企業やサービスの魅力を効果的に伝えられる動的コンテンツの可能性を感じ、2015年頃から本格的に事業を開始したのです。
——ファインズの顧客は中小企業がメインですよね。動画マーケティングは当時の日本になじみがない中で、どのような反応がありましたか?
想像よりもリーズナブルだという評価を多くいただきました。動画によるマーケティングは大手企業が行うことという印象が強い中、中小企業向けの動画制作を提案していたので、導入もしやすく、他社との差別化も図りやすいというお声をいただくことが多かったです。また、当時の顧客は「編集の方法がわからない」「編集ソフトが高額」といった課題を抱えており、また動画コンテンツの埋め込みがページランクに影響しやすいというSEO的な事情も追い風となり、事業は早期に軌道に乗りましたね。
——ファインズは動画マーケティングを軸に2022年に上場するなど、急成長を遂げていますよね。その要因はどこにあると考えていますか?
お客さまにとって「意外に導入ハードルが低かった」ということが要因のひとつです。加えて、企業向けの動画マーケティング事業を、営業組織を活用して本格展開する競合がほとんどいなかったことも動画マーケティングを軸に成長できた大きな要因だと考えています。また、外的な要因もありますね。上場前にコロナ禍に突入したことで、対面以外で詳細にプロダクトや企業の魅力を伝えられるプロモーション手法に対するニーズが広がり、動画マーケティングに注目が集まったことも大きいです。
——データを活用した顧客への伴走力も、競合他社との大きな差別化のポイントになったのではないでしょうか。
そうですね。インタラクティブ動画にも対応した動画のプラットフォーム事業にも力を入れていたことで、蓄積されたデータをもとに、お客様に対して「動画を活用したDXコンサルティング」という形でサービス提供ができるようになりました。これも、他社との差別化や成長の要因となった部分です。
データ活用で、メイン顧客である中小企業の方々の多くが抱く、「認知が足りない」「予算に限りがある」「確度の高いリード獲得がしたい」という要望にも、しっかりと伴走ができるようになっています。エリアや年代を限定したターゲティング広告、動画を閲覧したユーザーへのリターゲティング広告などはもちろん、ホームページ内の動線、価格やサービスの分析など、あらゆる側面からサポートしています。
外からではなく、中から変える。経営改革の決断
——急成長の一方、会社として課題を感じた部分などがあれば教えてください。
事業の拡大に伴い、“人的資本”への投資不足が成長のボトルネックとして表れてきたと感じます。
Webに関するコンサルティングは、経営に関する知識も必要ですが、そうした知識が標準化されないまま成長してきたため、個々の仕事の質や営業成績にバラつきが生じていました。これは、社内の人材教育ができていなかったことに由来していると考えています。
さらに、営業以外の部署での採用も進まず、AI活用などが思った速度で進められない、あるいは優秀な人材が流出するという事態に。これは、そもそも自社の魅力を社内外に伝えきれていないことも影響した結果でした。
——課題を抱えるなか、なぜ「経営改革」という大きな動きに踏み切ったのでしょうか?
2022年の上場後、会社をさらに成長させたいと願う一方で、売上も利益もやや低下傾向にある、という現実があります。
この停滞の根底には、先述の人材的な課題があると認識していました。経営コンサルタントとも協議しましたが、外部の力で社内を変えるイメージが持てませんでした。そこで、優秀なCXO人材を社内に招き入れて、内部から改革を起こそうと決断したのです。
——実際に経営改革に着手して、浮かび上がってきた問題などはあったのでしょうか?
まず感じたのは、会社のビジョンが、従業員にしっかりと浸透していないのではないか、という点です。「なんのために働くのか」「どうして頑張るのか」というメッセージが届かず、従業員が「自分自身の成長のため」「お金を稼ぐため」といった個人的な目標に終始しているのが現状でした。
上場までは、皆「上場する」という目標に向かって動けるのですが、その後にしっかりとしたビジョンを設計し、示せていなかったことが原因だと考えています。このような状態では、仕事のやりがいを見出すことも難しく、優秀な人材を採用したり、志の高い従業員に勤続してもらったりすることが困難になります。ビジョン設計の甘さが、先にお話しした課題にもつながっているのだという気づきがありました。
そこで、最初に着手しているのが企業としての一丁目一番地である経営ビジョンの再設定です。ミッションやバリューなど、さまざまな側面がありますが、まずは「なぜやるのか」という企業としてのパーパスを設定し、自分たちのあるべき姿や目指すべき方向性を示していくことが大事ではないかということになりました。
とくにこだわっているのは、「従業員全員でパーパスを創り上げること」です。ただ上層部からの指示で浸透させるのではなく、現場で働く従業員からのアンケートや議論を重ね、全員が納得し、自らの魂を込められるようなパーパスを目指しています。
顧客にも従業員にも、選ばれ続ける企業であるために
——今回の経営改革も踏まえ、今後目指していきたいファインズの姿について教えてください。
今回の経営改革では、パーパスなどのほか、OKRや1on1の導入、併せて従業員の評価制度や教育制度についても大きく変えていきます。「働きやすさ」だけでは、働く意味を見失いがちですし、「働きがい」だけでも、よい働き方は実現できません。今回の経営改革を通じて、ファインズは「働きやすさ」と「働きがい」が両立する組織を実現していきたいですね。
また、日本の生産年齢人口が減少していくなかで労働生産性を上げていくため、DXやAI活用がますます重要になっていきます。ファインズでは、自らがDXやAI活用を積極的に実践し、活用事例を体現することで、お客様に具体的な成功モデルを提示できる「ショーケースビジネス」としての存在を目指しています。
実際に現在、全従業員がAIを活用し、業務の効率化を図るなど、具体的な行動に移しています。これらの成功事例は、積極的にお客様に共有しています。
従業員やお客様など、ファインズに関わる方々が「ファインズがいてくれてよかった」と誇りに感じ、必要とされる企業を皆で構築していければと思っています。
時代の変化に伴う大きな流れに乗り、急成長を遂げたファインズ。その成功に満足することなく、その裏で浮かび上がってきた課題に正面から向き合い、自ら変革を選んでいます。
テクノロジーの力と人の想いを掛け合わせながら、「ファインズがいてくれてよかった」と実感される企業を目指す挑戦は、いま始まったばかりです。
【経歴】
株式会社フリーセル(現 ブランディングテクノロジー株式会社)の営業部門にてキャリアをスタート。その後、株式会社ファインズの立ち上げメンバーとして参画し、Webマーケティングの営業を中心としながらも経営戦略や事業全般の企画・推進に従事し、執行役員、常務取締役に就任。また、子会社を立ち上げ代表取締役に就任するなど、グループ内外での事業展開にも深く携わる。
2018年に株式会社ファインズの代表取締役社長に就任。2022年にはグロース市場上場へと導くなど、常に未来を見据えた経営戦略を推し進めている。