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株式会社ファインズ 執行役員 経営戦略室長・土屋政紀氏

2022年にグロース市場への上場を果たし、22,400社(2024年6月末時点)の顧客基盤を誇る株式会社ファインズ。一見すると順風満帆なその裏側には、企業理念の不徹底や社員のエンゲージメント低下といった、組織としての“内なる危機”が潜んでいました。

この課題に正面から向き合い、ファインズは2025年、大規模な経営改革に乗り出します。その舵を取るのは、執行役員 経営戦略室長の土屋政紀氏です。「なぜファインズで働くのか?」という根本を問い直し、社員や顧客に愛され、社会に必要とされる企業へと変革していきたいと語る土屋氏。会社の常識を覆し、未来を切り拓こうとするファインズの覚悟に迫ります。

なぜ、ファインズは変わるのか? 経営改革を決意した理由

——土屋さんが、ファインズには経営改革が必要、と考えた理由について教えてください。

当社経営に参画して、会社として掲げる理念が、社員や役員にまでしっかりと浸透していないことに課題を感じました。もちろん、ホームページには経営理念やビジョンが明記されていますが、それが社員の行動やサービスの設計にまで反映されているかといえば、疑問が残ったのです。

実際に入社後、部長クラス全員にインタビューを行ったところ、私が感じていたものと同じ課題感を持っていることがわかりました。

入社前の情報収集でも、いくつかの疑問を感じていました。たとえば、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が曖昧なことや、採用ページに教育や研修制度の記載がないことから、社員教育やキャリア開発制度がうまく機能していない可能性。また、ページごとに異なるドメインが使用され、合わせてデザインが統一されていないなど、部署間の連携が弱い「縦割り」の風土があるのではないかと想定しました。

―実際に入社して、特に印象的だったことはありますか?

自分たちの強みを正確に把握できていない、というところが特に印象的でした。

ファインズでは社員が「営業力の強さ」を自分たちの強みとして話すことが多いのですが、特定のサービスを特定のマーケットに対して販売している営業モデルである以上、それは真の「営業力」とはいえません。

ファインズの真の強みは、22,400社という顧客基盤と、そこから得られる膨大なデータを活用、かつ市場や顧客を知るマーケティング力にあります。この強みに関しては、私はファインズの可能性を大いに感じています。

また、多くの社員が経営改革を望んでいることも、ファインズがポジティブに変化できると感じた要因の一つです。社内アンケートでは、実に93%の社員が会社の改革を望み、経営改革に協力したいという結果が出たのです。既存のやり方に固執せず、より良い会社へと変革を起こしていこうとする姿勢。これは、平均年齢が若いからこそ会社全体が持つ、柔軟な思考の現れです。これこそが、ファインズの大きな強みだと思います。

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経営改革の第一歩、全社員でつくる「パーパス」

——課題解決のため、どのような経営改革を実行しようとしているのですか?

浮かび上がってきた課題の原因に対して、おもに5つの経営改革に着手しようとしています。

  • パーパス(存在意義)設定
  • 広報・PR機能の強化
  • 組織・人事制度の刷新
  • 教育・研修制度の構築
  • 営業力の強化

これらの経営改革は、段階的に進めていきます。

中でも最も重要な課題が「パーパス」です。現状、ファインズでは社員に対するビジョンの浸透がうまくいっていません。当社における「一丁目一番地」をパーパスと設定し、それがしっかりしていないと、当社が抱える多くの課題につながる根幹になってしまいます。

そこで今回、社員へのフォーカスインタビューの実施。さらに全社員にアンケートを実施し、自分たちがどうありたいか、社会にとってどんな存在でいたいかなど、キーワードやフレーズを挙げてもらっています。その結果を役員合宿などで議題し、経営目線も加えた上でパーパスをつくっている最中です。

社員一人ひとりが自律的に動いていくためにも、トップダウンではなく皆で創り上げるパーパスにしたいと思っています。

——第1ステージの、「広報・PR機能の強化」「組織・人事制度の刷新」はそれぞれ、具体的にどのようなことを行うのでしょうか?

ファインズでは、これまで広報PRがほとんど機能しておらず、ステイクホルダーに自社情報を十分に届けられていませんでした。そこで、当社の良さや経営・事業の取り組みをメディアに取り上げていただく活動を積極的に行うことや、オウンドメディアの運用を開始するといった施策をすでにスタートしています。

「組織・人事制度の刷新」は、おもに、従業員のエンゲージメントにアプローチするものです。これまでの人事評価制度は、営業が基準になってしまっているため、他部署の人材の評価が難しく、ばらつきが出てしまうという課題がありました。今後は、パーパスに沿った指針で評価ができるように変更していきます。

具体的には、組織・人事制度刷新は「パフォーマンスマネジメント」、「評価制度」、「報酬制度」の3階層を考えています。

特に要となるのが、パフォーマンスマネジメントで、その構成は

  • OKR:会社のパーパスという最終目標に向かって、部署横断で個人の目標を会社の目標と連動させる
  • 1 on 1:目標に向けて上司からの適切な支援を生み出す
  • エンゲージメントサーベイ:個人のエンゲージメントを定点観測しながらPDCAを回していく

となっており、これらを部分最適でなく、全体最適で導入する予定です。

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営業力強化の鍵は、全員営業にあり

——第2ステージと第3ステージで行われる改革を教えてください。

第2ステージでは「教育・研修制度の構築」を行います。これまでの新入社員教育は、最初から営業的な要素が強く、会社そのものの理念などが置き去りになっていました。今後は、まず会社のパーパスについて理解してもらい、その後に会社の理解やビジネスに対する姿勢、そして対象市場や商品・サービスに対する理解を深めてから、営業の手法などを教育するというように、教育・研修を段階的に設計していく予定です。

また、会社に必要な職種は営業だけなく、Web制作、商品開発やカスタマーサクセス、コーポレート部門など多種多様です。キャリア開発研修なども充実させ、社員の社内でのキャリア形成にも貢献する仕組みをつくっていきます。

第3ステージの「営業力の強化」については、特定のサービスを特定の市場に売り込むだけではなく、お客様にコンサルティング目線でソリューションを提供していく、営業力の底上げを図るプロセスを構築します。

また、ファインズは今後、「全員営業」を掲げていく予定です。これは、営業部門の社員だけでなく、社員全員が「自分は営業である」という意識を持って動いていこうというものです。たとえば、コーポレート部門にとっては社員が顧客であり、社員に対してサービス提供を行っていくイメージです。

さらに、先ほどお話した「全員営業」の浸透で可能になるのが、自社をショーケースモデルとしてビジネスを展開するというものです。戦略部門や人事、経理などバックオフィスの動きを、実際に業務を担当している社員がプロフェッショナルとして、お客様に経営改革の実績・ノウハウなどをプレゼンテーションするなど、臨機応変に対応できる環境に変えていきたいですね。

社内全体でこの意識を持つことで、営業力の底上げに寄与できると期待しています。

社員のワクワクが社会に波及する企業へ

——経営改革によって、ファインズはどう変わっていくと予想していますか?

今回の経営改革の成功により、社員のエンゲージメントが高い、強靭な組織へと成長できると確信しています。なぜなら、社員のエンゲージメントが低い状態では、お客様のエンゲージメントを高めることはできないからです。

社員の活力が向上すれば、それはお客様のエンゲージメントを高めるソリューション提案へと繋がり、ひいては既存の市場や商品・サービスに留まらない、自律的なビジネスモデルやマーケットの拡大も実現できるでしょう。

そしてやはり、今回の経営改革で最も大切にしたいことは、「社員皆がワクワク感を持って働ける会社にすること」です。社員がファインズで働くことのワクワクを共有し合うことで、社員にとってもお客様にとっても無限の可能性を持つ会社になれると感じています。

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社員がワクワクしながら働ける環境が整えば、会社は大きく変わります。ファインズの経営改革は、単なる制度改編ではありません。誰かの力によってではなく、自分たちの力で内側から、「人」に変化をもたらす挑戦です。

社員と顧客に選ばれ、社会に必要とされる唯一無二の企業へ。ファインズの経営改革が、その未来を一歩一歩、現実に変えていきます。

【経歴】
大手情報通信企業にて人事部からキャリアをスタート。
その後、ネットビジネス、ソリューション企画、マーケティング、ビジネスコンサルティングなど幅広い領域に従事。戦略部門の新設に伴い統括責任者に就任し、事業戦略やコンサルティング、さらに営業人事・人材開発の領域も所管。
同時に、経営企画室も兼務することで、コストマネジメント、M&A、構造改革、グループ再編などの経営改革プロジェクトを推進。
以降は、大手パッケージシステム企業、人材コンサルティング企業、SI企業、FinTech企業において、事業責任者や取締役・執行役員として新規事業の立ち上げや経営企画を担う。
現在、株式会社ファインズにて執行役員 経営戦略室長を務める。