
「人が足りない」——。
この言葉は、いまや多くの中小企業に共通する悲鳴と言ってもいいかもしれません。
とくに、運送や建設、物流など、エッセンシャルワーカーが事業を支える現場では、人手不足は単なる経営課題にとどまらず、納期の遅延や工期の停滞、ひいては事業継続そのものを揺るがす深刻な問題となっています。
こうした現実に向き合い続けてきたのが、動画を起点としたマーケティングDXで中小企業の集客や受注拡大を支援してきた株式会社ファインズです。
同社は今回、中小企業の人材不足という課題に、より深く、より直接的にアプローチするため、株式会社オルプラ、株式会社Nexilの2社を同時に子会社化するM&Aを実行しました。
なぜ、M&Aという選択だったのか。
この決断は、ファインズ自身の成長、そして地域社会にどのような変化をもたらそうとしているのか。
代表取締役社長・三輪幸将氏へのインタビューを通じて、ファインズが描く「次の成長戦略」を紐解いていきます。
「今すぐ人が必要」M&Aにつながった顧客の声

——今回のM&Aに至った背景を教えてください。
今回のM&Aの背景には、ファインズがこれまで向き合ってきた中小企業の課題、すなわち「人手不足」「生産性の向上」「受注拡大」という3つのテーマがあります。
ファインズは、動画を活用したマーケティング支援を軸に、中小企業の受注拡大をサポートしてきました。また、データの一元管理ツールなどを通じて、生産性向上にも一定の価値を提供してきたと考えています。
一方で、人手不足に関しては、求人媒体と動画コンテンツを掛け合わせた集客施策を提案してきたものの、「採用までに時間がかかる」という課題が残っていました。
現場では、「今すぐ人が必要」という声が非常に多い。そのニーズに応えきれていないもどかしさが、ずっとあったのです。
よりタイムリーに人材を配置できる体制を構築するために、人材紹介会社をグループに迎え入れる構想は、以前から検討していました。
——採用におけるリードタイムの長さは、中小企業にとってどのような影響がありますか。
とくにエッセンシャルワーカーを多く抱える現場系の企業では、退職などで人員に穴が開くと、納期や工期にダイレクトに影響します。
ファインズではそうした企業との取引も多く、「人員の穴埋めをスピーディにできないか」という声を数多くいただいてきました。
一定期間をかけて複数名を採用する場合には求人媒体が有効なケースもありますが、決まったポジションに対して早急に人材を確保したい場合は、人材紹介会社の活用が欠かせません。
今回のM&Aは、こうしたお客様の切実な声が大きな後押しになっています。
M&Aの決め手は「理想とする場所が重なったこと」

——オルプラ社、Nexil社の2社を同時にM&Aした理由を教えてください。
一緒にやっていきたいと思える会社が、たまたま同時に2社現れた。それが率直な理由です。
この2社とタッグを組むことで、中小企業が抱える課題をより本質的に解決できる絵が明確に描けましたし、地域社会への貢献度も一段高まると感じました。
——迎え入れる決断に至った決め手は何だったのでしょうか。
オルプラ社は運送・物流、Nexil社は建設と、それぞれエッセンシャルワーカー領域に強みを持つ人材紹介会社です。ファインズも、そうした人材を必要とする企業との取引が多く、非常に高い親和性を感じました。
加えて、この2社は「人材を集める力」においても大きな強みを持っています。
月間で1万人を超える人材が登録されており、中小企業向けの人材紹介会社としてはかなりの規模です。
一方で、紹介先企業の開拓については課題を抱えていました。キャリアアドバイザーが多忙になる中で、営業体制を十分に整えられないフェーズにあり、困っている企業が多いにもかかわらず、その存在が十分に知られていないという状況があったのです。
ファインズは現在、約7,000社の顧客基盤を持ち、そのうち半数程度が求人関係で取引があります。これらの求人は、オルプラ社やNexil社が抱える人材とすぐにマッチングが可能ですし、現時点では求人取引がない企業でも、将来的にニーズが生まれる可能性は高い。お互いの強みで、足りない部分を補完し合える関係だと感じました。
——経営改革の最中で、カルチャーの異なる2社を迎え入れることに不安はありませんでしたか。
確かにカルチャーや雰囲気は異なりますが、迷いはありませんでした。
ファインズには、明確なパーパスとバリューがあります。向かう方向さえ共有できていれば、手段ややり方が違っても、本質が大きくブレることはないと考えています。
実際にM&Aに至るまでの対話の中でも、中小企業の人材不足解消やエッセンシャルワーカーのキャリアアップ、さらには若い世代でキャリアに行き詰まっている方への支援など、それぞれの会社が描く未来像を共有できました。
アプローチは違っても、「中小企業の課題を解決したい」「世の中をよくしたい」という想いは同じ。オルプラ社、Nexil社、ファインズは、家族のような関係だと感じています。
人とITの力で、中小企業を強力に支える

——今回のM&Aを起点に、事業や提供価値はどのように進化していきますか。
今回のM&Aによって、人材確保に直接アプローチできるスキームが整いました。
中小企業の課題のひとつである「人手不足」に対する支援は、確実に強化されたと感じています。
次に注力したいのが「生産性の向上」、とくにバックオフィス領域です。
人を採用できても、受け皿となる体制が整っていなければ、組織はうまく回りません。
しかし中小企業では、経理や労務、人事といったバックオフィス機能が十分に整っていないケースが少なくありません。
曖昧なワークフローのまま事業が拡大すれば、ガバナンスやコンプライアンスのリスクも高まります。これは、事業承継や成長戦略としてM&Aを考える際にも、大きな足かせになります。
——具体的にはどのようなアプローチを考えていますか。
ファインズの中に、バックオフィス業務を請け負う機能を備えたいと考えています。
BPOという形で業務を引き受け、専門性をもって遂行し、成果物を提供する。バックオフィスを丸ごと任せていただける体制を目指します。
もちろん、人の力だけでなく、AIなどのテクノロジーも積極的に活用します。中小企業にとっては、AIを「どう使うか」を理解すること自体が難しいケースも多い。だからこそ、ファインズが介在する意義があると考えています。
——それは「企業と地域社会の未来に、テクノロジーの追い風を。」というパーパスとも重なりますね。
はい。この仕組みは、首都圏への一極集中という社会課題の解決にもつながると考えています。
業務を担う人材は、必ずしも都市部にいる必要はありません。地方在住で専門性を持つ方が、リモートで活躍できる環境をつくることも視野に入れています。
「こうしたい」に応え続けられる企業へ

——今回のM&Aは、成長ロードマップの中でどのような位置づけなのでしょうか。
今回のM&Aは、これから構築していくビジネスモデルの重要な起点です。
WEBマーケティングによる受注拡大、人材不足への直接的な支援に加え、生産性向上の領域でも具体的なアクションを起こしたいと考えています。そして2030年度までに、これらをひとつのビジネスモデルとして確立することが目標です。
お客様から寄せられるあらゆるリクエストや切実な悩みに対して、「できる」と応えられる企業であり続けること。それが私たちのゴールです。
M&Aという手法を通じて、中小企業の課題に向き合い続けるファインズ。今回の取り組みは、単なる事業拡大ではなく、新しい支援のスタンダードをつくる挑戦でもあります。
ファインズの一歩一歩は、企業の可能性を広げるだけでなく、現場で働く人々が「働き続ける」「地域に根を張る」「キャリアを諦めない」ための選択肢を、確実に増やしていくはずです。

